ちょっとしたおはなし。



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不幸の手紙 2 -プロトタイプ-
category:歌モノ
***  ***

 最近おれの周りでよく物が失くなっている。
 例えばそれは筆箱だったり、教室に置きっぱになっている教科書だったり、机の横にかかっている体育館シューズだったり。おれも提出したはずのノートが一人だけ返ってこなかったりした。急に失くなったら困るようなものだったけど、また買ってしまえば事足りるものばかりで、周りのヤツは特に困ってる様子じゃなかった。けど、失くなったものは二度と持ち主のもとには返ってこなかった。それだけが不思議だったけど…。
 今思えば、それが始まりだったのだと気付かなければいけなかったんだ。

 紛失騒ぎが落ち着いて少し経った頃だったと思う。五時間目の数学の時間。眠気を堪えながら必死にノートを取っていると、隣の席から呻き声が聞こえた。何だ?と思って見て見ると、松田が腹に手を当てて苦しそうにしている。
「ちょ、松田、大丈夫か?」
「……腹、痛ぇ……」
 痛みに歪んだ顔には脂汗が浮かんでいて、流石におれも普通の腹痛なんかじゃないって気付いた。今にも倒れそうに見える。そんな松田の様子に周りも気付き始めて、静かだった教室が一気にざわつく。今まで教室に響いていたチョークの音が止んで、先生がこっちに振り向いた。
「どうした、静かにしないか」
「先生、松田が腹痛いって」
 先生も松田の様子が尋常じゃないことに気付いて、近づいてきて顔を覗き込んだ。
「おい、大丈夫か、保健室――」
 行ってくるか、という言葉を先生が言う前に、松田の体がぐらりと傾いた。そしてそのまま、吸い込まれるように床に倒れこんでいく。救急車、と誰かが叫んだ。慌ててケータイを取り出して119にダイヤルする。教室を飛び出すやつが視界の端に見えた。たぶん、保険医を呼びに行ったんだろう。
 それから十分くらいして到着した救急車に、松田と付き添いで保険医が乗り込んで病院に向かった。その後の教室は騒然としていて、授業どころではなくなっていた。
 LHRの頃には病院から連絡があったらしくて、担任から命に別状はないって聞かされた。急性の盲腸だったらしくて、手術すればすぐ治るんだそうだ。それを聞いて少し安心した。倒れこんだ時の松田は死にそうな顔をしていたから。明日にでも見舞いに行こう、と約束して、おれ達は家路に着いた。

 病院のベッドに横たわっていた松田は、普段よりは少しやつれたような感じがした。それでも元気そうだったけど。
「松田ぁ、お前びっくりさせんなよなー!」
「ホントホント。倒れた時はまさか死ぬんじゃねえよなって思ったもんな」
「いやあ俺もあんとき死ぬかと思ったけど、この通りなんとかなったぜー」
 ベッドの上で談笑してる姿を見ると、大丈夫そうだって思えた。どんくらいで退院できるのか聞いたら、安静にしてれば来週中には、なんだそうだ。盲腸って聞くと大変そうだけど、案外そうでもないのかもしれない。
「それにしてもホント急だったよな。前兆とかなかったんか?」
「いや、それに関しちゃ医者も不思議がってたんだよなー。普通はちょっと前から胃の方が痛くなって、だんだん下の方に降りてくるんだって」
 実際何が原因で盲腸になるのかはまだよく分かってないらしいけど、と松田は付け加えた。
「へええ、治療法あんのに原因わかんねぇんだ」
「まあな。あれだよ、不幸中の幸いってやつ?」
「確かに!」
 ははは、とその場が盛り上がる中で、今井だけが険しい表情をしていた。
「――なあ、あれ覚えてるか?」
「あ?何の話だよ?」
「修学旅行で俺が話した、都市伝説」
 どうしてその話が今出るのかわかんなくて、おれ達は顔を見合わせた。
「不幸の手紙がどうしたよ?」
「――だって今んとこ、あの時話した通りになってんだぜ」
「は…?」
 と言われても、修学旅行なんて二ヶ月も前の話しだし、あの時話した内容なんておぼろげにしか覚えてない。確か、笠井と生活指導の先生と、他何人かに送ると面白いかも、なんていうくらいは覚えてるけど。
「どういうこと…?」
「だってほら、物なくなればいいとか、盲腸になればいいとか骨折とか…。骨折はまだ起こってないけど、盲腸までは確実になってんじゃんか」
「や、そうかもしれんけど…。偶然だろ、ただの。それに都市伝説だろ?実際ホントに効く不幸の手紙なんてあるわけねえだろ」
 おれがそう言うと、今井は少し青くなった顔を上げて、考えてみろ、と言った。
「学校で物が失くなったヤツ、あん時あの部屋にいたメンバーだけだぜ」
「なっ…」
 言われてみれば、それはそうかもしれないけど…。でもそれは偶然だってありえるだろう?
「それに、さ…。盲腸になればいいって最初に言ったの、松田なんだよ…」
 それを聞いた瞬間、ざっ、と冷水を浴びたみたいに、病室の温度が下がった気がした。




考えながら書いてるので、後々名前が出てくることが…
これ絶対10枚じゃ収まんない。
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